February 20, 2009

カゼヲキル 〜助走〜

マラソンや駅伝などのテレビ中継での、ソフトでポジティブな解説でお馴染みの増田明美さん初の小説です。

御自身をモデルにしたのかと思われるような、純朴で走ることが大好きな女子中学生が主人公です。大きな可能性を秘めた原石である主人公がこの巻で発掘され、この後『激走』『疾走』と磨かれ成長していくようです。

小説のプロが書いた作品ではないので、多少引っかかる所はあります。表現がくどいところがあったり説明が足りないところがあったりもします。しかしそれを補ってあまりあるのが“走り”の場面です。そこはさすが走りのプロ。走ることのワクワク感(この巻では中長距離です)を活き活きと表現しています。

小学校高学年から中学生あたりの読者と想定して書かれたそうです。ちなみに私は約2時間ほどで読み終えました。昔NHKで夕方に放送されていた少年ドラマシリーズのような、少し懐かしいテイストも感じられます。まだまだ荒削りで、裸足で野山を駆け回っているかのような主人公と作者。この後オリンピックを目指すらしいので、この先が楽しみです。

しかし如何なものかと思うのがこの表紙のイラスト。増田さんのイメージを残しつつ純朴な少女の表情を表現したのでしょうが…これは中学2年生には見えません。せいぜいが小学3年生くらい。惜しかった〜。

(講談社 1350円)

July 24, 2007

月刊ランナーズ 2006年4月号7月号

専門分野に特化した雑誌というのは何かのきっかけでもない限り読むことはまずないのですが、見てみるとその分野を深く探る入口が見えたりすることがあります。

 走るようになってから、某図書館で見かけたのが『月刊ランナーズ』(株ランナーズ発行)です。それまでも視界の片隅に入ってきていたんでしょうが、走ることが何より嫌いだった頃には見向きもしなかった雑誌です。

 自分がちょっとでも走るようになると、その雑誌に書かれている情報は有益なものに変わります。まぁ雑誌の半分以上は“私のマラソン人生”だとか“○○市民マラソン・レポート”といった記事で、そういった事には興味がないので読み飛ばしていますが、トレーニング方法やお医者さんの話なんかは、勉強になります。

 一生懸命走って少しづつ記録も上げて、食生活なんかにも気をつけて、市町村の大会なんかに参加する人々のことを、ランナーズ界では“市民ランナー”と呼ぶ、という事も初めて知りました。たぶん町民でも村民でも“市民ランナー”という事になるんでしょうね。

 で、ご近所や仕事・業界仲間なんかの市民ランナーが集まってランニングサークルみたいなものを作って練習したりしてるんだそうです。ふ〜ん。

 GPSを使ったペースメーカーで、どのくらいのペースで何キロ走ったかなんてことをぱぱっと教えてくれる腕時計状の機械なんてのもあるようです。で、パソコンに使いでトレーニング管理するらしいです。すげ〜。そんなにマメにはなれね〜。

 基本的に怠惰でイイ加減で集団に所属することが出来ない私は、こういった便利な雑誌も新古書店で100円で買ってくるのです。だって、去年と今年でそんなにランニング理論が変わるって事はないでしょ? で、必要な記事だけ切り取っておこうと思っています。

 きっかけは図書館。スクラップしておきたい場合は新古書店、お〜、しぶちんだねぇ、というわけです。
 しかしいよいよ暑くなってきたし、これからどうしようかなぁ…。

May 16, 2007

『憲法九条を世界遺産に』 太田光・中沢新一 集英社新書

4月中に読んだんだから憲法記念日の前に記事を書いて、ちったぁナニモノかに貢献すればいいんでしょうけど、そういった殊勝な心掛けはどっかに忘れちゃったもんで、今頃紹介です。

太田光しは言わずと知れた爆笑問題の線の細いほう。テレビで総理大臣になって眉間に青筋立てて叫んでいるのはちょっと演出過多かなとは思うものの、言っていることは共感できることが多い。

一方の中沢新一氏は80年代半ばあたりの“若手論客”。その後オーム騒動では「(サリンで)何万人も死ねば意味合いが違ったのにね」発言で一部に大顰蹙。忘れられたころに登場、というワケですか。

本の帯には“白熱の対論。”と書かれていますが、そんな事は全然ない。白熱なんかしません、べつに意見が対立しているワケじゃないんですから。

憲法九条を世界遺産にしようというのは、こんな絵に描いた餅みたいなモノを守る事自体に意味がある、という事のようです。今の日本人に一番欠けているのは、そういうやせ我慢とも言える毅然とした態度だ、という事です。そこは共感。やせ我慢、大切です。


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そんな憲法を改正したくてたまらない総理大臣は、なぜ改正しないとイケナイのかという説明も議論もなしに、「取りあえず国民投票できるようにしちゃおうぜ」と法案を衆院に通しました。そんな大事なことをこんな国民に任せていいのか、と思うんですけどね、我ながら。

その法案の中には『成人を18歳に』なんていうオソロシイものも。
22歳や25歳くらいに引き上げるってんなら分かるような気がするんですけどね。
20歳さえ大人の仲間に入れるのに躊躇する(あのお馬鹿成人式を観よ!)ってのに…。


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憲法や改憲を考える入口としては、悪くない一冊です。言葉遣いも文章もわかりやすいでから。

April 24, 2007

4/10〜

『買ったり読んだり』…今回は図書館から“借りたり”だったりしますが…。


『武井武雄 思いでの名作絵本』(河出書房新社)
 
 大正から昭和にかけて活躍した童画家です。ちなみに“童画”という言葉を作った人です。大正11年に創刊された『コドモノクニ』という絵雑誌の創刊号の題字と表紙も描かれました。

 絵本や挿し絵など、多作な作家だったので代表作を挙げるのは難しいのですが『赤のっぽ青のっぽ』が有名かもしれません。鬼好きで、鬼に関する作品が多く、民芸や郷土玩具も好きだったようで、関連作品も多く掲載されていました。

 時代背景から来るのでしょうか、いわゆるモダンな作風(ですが、ちょっとキモチが悪い感じもある)、独特の味わいのある作品を生み続けられました。

 特別好きというわけではありませんが、いっぺんまとめて見ておきたいなと思っていました。長野県岡谷市に童画館があるそうなので、一度原画も見てみたいものです。



『図説 鉄腕アトム』(森 晴路  河出書房新社)

 手塚治虫と言えばアトムですが、元々は脇役として世に出たのでした。非常にこだわりの強い作家として有名な手塚氏、アトムも多く話に多くのバージョンがあり、書き直しや作り直しもとても多かったようです。それらをとても詳しくまとめた研究書のような本でした。

 手塚氏には“アトムの呪縛”のようなモノがあったようで、そういった苦悩なんかもちらりと感じられるように書かれていました。

 アトムという国民的ヒーローを鏡に、そこに写る、頑固で意地っ張りで見栄っ張りで負けず嫌いの手塚氏の姿が浮かび上がってくるようでした。
 押し入れの中にしまってあるアトムを引っ張り出してきて読み直したくなりました。


April 08, 2007

本の雑誌 4月号

実はもう半月ほど前に読み終ってるし、来週には5月号が発売されるんだけど…。

大学に入ったころだからかれこれ四半世紀程前…自分の口から自分自身に関することを話すときに“四半世紀前”なんちゅう、近代史的な言葉が出てきてしまう事自体、かなりがっくし…から読み続けている雑誌です。
“本を読むことが仕事になればいいんだけどな”という目黒孝二氏と椎名誠氏が中心になって始めた、お勧め本紹介の小雑誌が、あれよあれよという間に発行部数を伸ばし、書評界での地位を確立していった様子を、リアルタイムで見続けていたという事もあり、ヒジョーに思い入れのある雑誌です。

学生時代からお金はないくせに本は読みたくてしょうがなく、当時暮していた街の古本屋を利用していました。古本屋は定価より安く買えるとはいえ、ツマラない本を買う余裕などないので、この雑誌でお勧め本をリサーチして買っていました。

勿論新刊の案内がほとんどですから、しばらく寝かせておいて(間を置いて)古本屋に行ったり、古本屋で本の雑誌のバックナンバーを買ってきたりしていました。

卒業して社会人になっても買い続けたのは、この雑誌で勧められている本なら(ほぼ)間違いなく面白いという事だけではなく、発行人の目黒氏と編集人の椎名氏と、この雑誌の挿し絵を描いていた沢野ひとし氏に、憧れ魅かれていたというのが大きいですね。
自分より少し先を生きている(勝手な思い込みですが)先輩の後を追っかけるようにして生きてきた面があるように思います。

2001年3月号で、目黒氏が発行人から降り、同号の編集後記からも椎名氏とともに降りたときに、時代が変わろうとしているのかなぁと思いました。もっとも、それ以降も両氏ともに雑誌の中での連載を持ってはいたのですが…。

今号で目黒氏の連載も終るとの記事を読み、いよいよ一つの時代が終るんだなぁと、寂しい気持ちになってしまいました。
青年が中年になり、やがて初老を迎えた…自分も確実にそうなっていくという現実を突きつけられたような気になりました。
当たり前のことなんだけど…。

椎名氏の連載と沢野氏の絵が無くなったら、買い続け読み続けなくなっちゃうのかもしれないなぁ。
それは凄く寂しい事なんだけどなぁ。